公立小学校における給食のアレルギー対応

以前、公立小学校の給食試食会の話を書きましたが、今日は公立小学校における給食のアレルギー対応取り組みについてご紹介したいと思います。公立小学校といっても地区によって異なるので、私が住んでいる地域における取り組みについてです。

目次

長男、アレルギー発覚

本題に入る前に、長男のアレルギー歴を簡単にご紹介します。長男は乳幼児期から小麦と卵のアレルギーです。たまに胡桃とかにも反応します。

彼が6ヶ月を過ぎた頃、全身に発疹が出ました。それでアレルギー科を受診したら、皮膚の塗り薬の処方をいただくとともに、血液検査をすることに。先生曰くそのように発疹が出る子は食物アレルギーの可能性が高いと言われたからです。すると見事に卵白、小麦、グルテンの3項目で反応が出ました。

当時は離乳食を始めたばかりでお粥しか食べさせていなかったですし、私も夫も食物アレルギーはなく、全く想像をしていなかった結果に絶望、愕然としたのを覚えています。特に私が育った世代はまだアレルギーが珍しい時代だったので、卵と小麦が食べられなくて生きていけるんか?とさえ思ってしまいました。

食物アレルギーの症状

しかしアレルギー科の先生曰く、血液検査の数値が全てではないとのこと。つまり血液で反応が出ても実際は食べられる子、加熱すれば食べられる子、ある一定の量までは食べられる子がいたり、反対に血液反応が出ていなくても実際食べてみたらアレルギー反応が出る子・・ということもあるそうです。IgE抗体検査といわれる血液検査でしたが、アレルギーを見つけるための一つの目安だと説明されました。

そこで先生の指示のもと、うどんを少量ずつ与えてみることにしました。

うどんに含まれる小麦粉量

茹でうどん50g=小麦粉50gではありません。うどんは「小麦」「塩」「水」でできているので、茹でうどん50gに含まれる小麦粉の量を調べる事から始まりました。色々なサイトを研究し、私が達した結論は、茹でうどんに占める小麦粉はおよそ1/3程度であるということ(諸説あります)。つまり50gの茹でうどんには、およそ16.66gの小麦粉が含まれていることになります。

体調が良い時に、茹でうどんをまずは1日10gから与え始めました。子供がアレルギーをお持ちの親御さんはご存知かと思いますが、アレルギーをテストする場合は、本来は病院で行うのが好ましいですが、私のように医師の指示のもと自宅で行う場合は、本人の体調が良い時に、必ず病院が空いてる時間帯(午前中など)に行ってください。体調が悪い時だとアレルギー反応を見分けずらいですし、病院がやっていない時間帯(夜など)や休診日、日曜・祝日は避けないと、何かあったときにすぐに病院にかかれないからです。

そのようにして毎日10gずつ増やしていき、ついに60gに達した時、反応が出ました。

鼻水が止まらない!

茹でうどんを60g食べ終わった直後、特に変化はありませんでした。ところが2時間後くらいから鼻水が止まらなくなり、その鼻水が喉にかかって咳き込む様子。そんな状態が2時間くらい続きました。これはアレルギー反応だと確信したのは、茹でうどんを食べる直前まで元気だったこと、鼻水が出ている間もまあ元気だったこと(元気だけど鼻水だけ出てる状態)、鼻水が止まった後はケロッと元通りになっていたからです。

このことを先生に話した結果、小麦製品は除去しましょうということになりました。そして小麦で反応が出たということで、卵についても除去が決定しました。

茹でうどん50gまでが許容範囲ということは、茹でパスタに換算すると25g、市販の食パンに換算すると13.9g、麩に換算すると5.0g、乾燥パン粉に換算すると8.9gになります(独自調べによる)。つまり…本当にほとんど小麦製品は食べられないということです。

家にあった小麦製品で茹でうどん50gに相当する量を計ってみました
計量に使用したお皿のサイズ感です。手のひらの半分くらいのサイズ。

私自身はパンも好きだし、料理にも小麦をよく使っていたし、さらに卵も使えないとなると、本当に何を作ったらよいのか分からなくなり呆然としました。今から10年ほど前の話ですが、当時はグルテンフリーとかヴィーガンとかいう言葉はほとんど世間に浸透していませんでしたので情報も少な過ぎて落ち込みました。絶望です。

保育園でアレルギー対応拒否

小麦・卵除去の日々は最初は実験の繰り返しでした。もう本当に長い話になるので割愛しますが、私が辿り着いた結論は、片栗粉があれば日々の料理は何ら問題ないということです。唐揚げも、ハンバーグも、トンカツもエビフライも小麦粉と卵はいりませんよ。ちなみに私はベイキングもするのですが、その場合も米粉とかアーモンドプードル、ベイキングパウダー、サイリウムとかで何とかなります。

そんな長男もついに家の外で集団生活に入る時が来ました。当時は待機児童問題が深刻でやっとやっと見つけた小規模保育の保育園に入園することになりました。入園直前までアレルギー対応をしますよと説明を受けていたのですが、ある日突然呼び出されて、やっぱりアレルギー対応はできないので毎日お弁当を持ってきて下さいと言われました。

は?え?

怒りを抑えて説明を受けました。でも調理師さんの説明を受けて納得せざるを得ませんでした。調理師さんはこれまでもアレルギー対応をしてきたけど、小麦アレルギーの子の対応をするのが怖いとおっしゃいました。別で調理したり、調理器具を分けることはできるけど、小麦のように空中を舞うものはどうしても混入が避けられないと。特に小さな調理場では空中に舞った小麦が入ってしまう可能性があるので、もしアレルギー反応が出たら大変なのでご理解いただきたいと。

そうか、小麦って舞うよね。小麦アレルギーってそういうことも考えなくちゃいけないんだ…。

調理師さんの申し訳なさそうな顔と、きちんと息子のアレルギーを理解して対応してくれいると感じたので、私は納得しました。そこから毎日お弁当生活が始まりました。

アレルギー対応してくれる保育園

毎日お弁当生活を半年ほど続けた頃、近くに新しく認可保育園ができ、運良くそちらに転園することができました。

こちらの保育園ではなんと小麦アレルギーもきちんと対応してくれる園で、私はついにお弁当生活から解放されました。その保育園は除去できない時は、完全に違うものを作ってくれるスタイルだったので、給食の一部だけ代替品を持参するということもなく、本当に助かりました。

この頃から何となく小学校での給食はどうなるんだろうと調べ始めました。当時テレビか何かでアレルギーを持つ家族のドキュメンタリーみたいなのを見て、衝撃を受けました。その番組で母親が「だいたい8割はお弁当ですね」と言っていたからです。8割て….ほとんど給食食べられへんやん。はい絶望(何回目?)。

お弁当フリーの生活もついにここまでかと。小学校に入ったらもうほぼお弁当だと覚悟しとけよ自分。覚悟があれば人は何だってできるってNASAの人が言うてたもんな。よし。

再びお弁当生活突入

ところが、地元の小学校に入学する前に転勤による引っ越しが決まりました。息子が2歳の頃です。引っ越し先のアメリカでは幼稚園に入園しましたが、そこではアレルギー対応はあるにはあったのですが、該当する食べ物は除くというスタイルでした。除去ではありません。例えばパンが出てくる日だったら、パンなし給食。小麦をまぶしたグリルドチキンだったら、チキンなし給食。お米の日とかないですから、アメリカ。毎日パンかパスタかクラッカー。おかずも今まで食べさせたことのないメニューばかりで、何が使われているかもよく分からなく、何の迷いもなくお弁当持参一択でした。

でもアメリカって食の多様性がめちゃくちゃ進んでいて、パンをはじめとする小麦製品(パスタやラーメンなど麺類、ピザ、冷凍食品、クッキー、スナックなどなど)のグルテンフリーが当たり前のようにスーパーに陳列していました。種類は少ないけどあらゆる小麦製品のグルテンフリー版があるんです。おにぎりや団子のように小麦アレルギーには有難い商品は買えないけど、グルテンフリー商品はどこでも手に入る感じでした。ヴィーガン向け食品も豊富で、「GF」マークと「V」マークにはもう何度も助けられました。

グルテンフリーラベル。FDA(Food and Drug Administration*)の基準をクリアしていれば、ラベルはどんなラベルでもOK。他にもいろいろある。
*アメリカ食品医薬品局、日本の厚生労働省に似ている機関
ヴィーガンラベル。こちらはFDAによる基準はなく、ヴィーガン認定機関のようなところがつけているマーク。他にもいろいろある。

しかもアメリカのお弁当って、全然気合い入っていないんですよ。この話はまた別でご紹介したいと思いますが、基本サンドイッチと果物でOK。グルテンフリーパンも気軽に手に入るので、再び始まったお弁当生活は思っていた程しんどくはなかったです。

日本の公立小学校に転入

アメリカでは小学校も入学しましたが、そこでも幼稚園と同じく気楽なお弁当ライフを送っていました。

そして時は流れついに日本に帰国することになりました。近所の公立小学校に転入することになったんですが、初めての土地でしたし、給食情報も全くなく、数年前に入れ込んだ「だいたい8割はお弁当ですね」という知識を持って、給食説明に挑みました。

卵は除去できます

息子が通う地域ではアレルギー対応が思っていた以上に進んでいました。

まず「えび、かに、そば、落花生(ピーナッツ)、アーモンド、あわび、いくら、カシューナッツ、キウイフルーツ、くるみ、バナナ、まつたけ、やまいも」の13品目は、そもそも給食で使われません。息子はたまに胡桃で喉がイガイガするタイプですし、ナッツアレルギーは反応が重篤なことが多いと聞くので、これは安心できます。

そして卵と乳については除去してくれます。卵スープだったら、卵なしスープ(=キャベツと人参だけのスープになる)を作ってくれたり、シチューだったら牛乳を除去してポトフみたいに作ってくれます。卵の除去は1ヶ月に2〜3回ある感じで、事前に学校に伝えておくことで、当日何かを持参することはありません。

で、小麦は?

結論から言うと、今は一部除去となり、代替品を持っていくのは月に4〜6回です。

しかし息子が転入した当初は小麦に関しては全く対応を行っておらず、パンの日(週に2回ほど)や衣をつけた揚げ物の日、うどんの日、シチューやカレーなどのとろみ付けに小麦を使っている日などなど、ちょくちょく代替品を持参する日がありました。この頃は週に2回ほど代替品を持たせていたイメージです。

ところが2年前から、ついに小麦の一部除去が始まりました!一部除去というのは、麺類(うどん・チャンポン麺・素麺)、ワンタン、ラビオリなどは全く除いて作ってくれて、クリームシチュー、クリームスープなどはとろみ付けに小麦を使わないという対応です。ただしマカロニ・パスタ類、フライ、調味料類は除去の対象外です。

さらにパンも週1になり、米粉パンやおにぎりを持参する日も減りました。私の印象では米粉フライや米粉カレー、米粉シチューといった、そもそも小麦を使わないメニューも増えたような気がしています。

そんなこんなで「だいたい8割はお弁当ですね」の呪縛にかかることなく、何とか小学校給食を過ごせています。

どうやって除去や持参を学校とやりとりするのか

ところで、「この日はこのメニューを除去して下さい」とか、「この日はこのメニューはいらなくて、代替品を持参します」とか、どうやって学校とやりとりをしているかご存知ですか?

実はアレルギーっ子は毎月の給食献立を他の子より早くもらってきます。今は献立表もデジタル化しましたが、アレルギーっ子は引き続き紙でももらってきます。

献立表にチェックを入れたものを2部作成する

事前にもらってきた献立表に、直接チェックを入れていきます。除去の「除」マークや、代替品持参の「代」マークです。他にも欠食の「欠」マークもありますが、欠食にするとおかずが減ってしまうので、息子は使っていません。本人によるその場で除去するパターンもありますが、このパターンも使っていません。

これを2部作って一つは学校に、もう一つは自宅用に保管します。学校に提出したものは栄養教諭の先生にチェックされ、見落としがあると連絡が入ります。

チェックを入れた献立表を2部作り、一部は学校、もう一部は自宅用。
2日(火)のメニュー”白身魚の甘酢あん”は小麦の衣がついた製品のため、「代」(=代替品を持参する)マークがあります。また5日(金)の”七夕にゅうめん”は小麦製品であるそうめんが入っているため、「除」(=小麦製品を除去した状態で食べる)マークをつけています。

その後、教室と調理室に貼られ、先生も子供も調理員さんも毎日いつでも確認できるようになります。クラスの子たちも見れるので、今の子はアレルギーリテラシー高いなと思います。

我が家では毎朝給食チェックタイムがあり、今日は全部食べられるよとか、今日は米粉パン持って行ってね、とか確認しています。

アレルギーっ子は優先?

ちなみに学校では配膳の前に全校に向けて、「◯年◯組の〇〇さん、除去食を給食室までとりにきて下さい」みたいな放送が流れるそうです。我が家ではいちを毎朝確認していますが、呼ばれたら給食室まで取りに行き、他の子より先に給食を手にすることができるそうです。除去の場合は少し多めに配膳するよ、と調理員さんがおっしゃっていました。例えば卵スープの除去の場合、卵がなくなってしまう分、他の具材や汁を多めにしてくれるそうです。

最初息子は他の子より先に給食を手にすることを喜んでいましたが、高学年となった今は給食室に取りにいくのがめんどいだそうで…。てめえ、調理員さんの気遣いと苦労に感謝しろよ、ボケ。と心の中で叫びつつ、優しく諭しています。

アレルギーがあっても給食はどれも美味しい!

そんな息子ですが、給食はどれも美味しいと言っています。たまに今日のこのメニュー美味しかったからお家でも作ってとか、今日出てきたふりかけ美味しかったから買ってとか言うてきます。アレルギーはあるけど、好き嫌いなく出されたものを食べる息子を誇りに思います。私のレパートリーも増えてます。ちなみに次男は食物アレルギーないんですけど、好き嫌いが多くて手こずってるんですけどね…。

小学校給食はほとんど食べられないと諦めていたところからスタートしているので、今の状況に正直ホッとしています。そして何より毎日給食を楽しみにしている長男を見て、心から日本の給食ありがとうと思っています。

地域によって対応は異なると思いますが、なるべくアレルギーの人たちがボーダレスで給食や外食を楽しめる時代が来て欲しいなと思っています。昔に比べたらだいぶそうなってきましたが、まだまだできると信じています!

では!

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この記事を書いた人

元公益事業の団体職員、現webデザイナー兼在宅ワーカー。3回の海外生活経験を通して見た景色や子育て・日々の雑多を発信しています。仕事に子育てに奮闘しています。

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